自分の数少ない人生の目標の一つに『バイクの免許を取ってツーリングする』というものがある。
バイクの知識は無いが動画サイトで車載動画を観る程度には好きで、晴天の道路を気持ちよさそうに走るバイクを見ていると羨ましくなる。
車の免許を取ったのは大学二年生の頃だったが、その時からバイクへの憧れがあった。
恐らく世間一般の人が憧れるバイクといえば、代表的な型とも言えるネイキッドや荒野が似合うアメリカン、あるいはサーキットに出そうなSS(スーパースポーツ)だと思う。
もちろんそれらもカッコいいが、自分はビッグスクーターが気になっている。もちろん世の珍走団が乗るような下品な改造を施したものではなくドノーマルである。
当時の自分は車を持っておらず、先輩から格安で貰った原付で十分事足りていた。家具などの大荷物を買うことも滅多に無く、必要ならば友人の車で助けてもらう程度だった。
とはいえ、原付には速度制限や二段階右折などの時世に合わない法律が常に付きまとう。そこで快適性や安定性などを優先していった結果、ビクスクに辿り着いた。
「雨の日用にルーフがついたのもいいな」と思っていたが、友人に「そこまで行くともはや車でいいんじゃね?」と言われたので止めた。あと見た目がかなりピザ屋になるからね、仕方ないね。
もちろんSSの見た目も自分のようなオタッキーな人間には刺さった。ゴテゴテのフルカウルはカッコいいし、フル装備なら気分は特撮ヒーローだ。
しかし自分には避けて通れない問題がある。それが『足つき』だ。
前傾姿勢をとるSSは自然とシート高が上がる。普通の人なら特に気にせず車種を選べるかも知れないが、自分の場合は低身長で短足という致命的な欠陥がある。
車と同じ鉄の塊を運転する以上、止まっているバイクを両足でしっかり支えられるシート高を選ばなければならない。その点ビクスクはシートも低いし姿勢も楽なので、自分にピッタリなのだ。
重心が低いので安定感があり、メットインスペースも広い。250ccと言わず125ccでも十分に通勤の足になる。(125だとビクスクではなくスクーター?)
そんな便利なビクスクなのに、先述のバカスクのせいで評判はボロボロである。爆音マフラー、イカ漁船のような電飾、乗ってる人間の迷惑行為、etc...。普通のバイクも含め、かつて三ない運動に発展した程度には問題児が多い。
そして同じバイク乗りの中でもビクスクは下に見られている。やれMTじゃなきゃダサいだの加速が遅いだの、好き勝手な理論を押し付ける輩は多い。また、軽自動車相手に無条件でイキる人がいるように、普通のバイク同士でも『排気量の多い方が正義』みたいなマウントおじさんも多いらしい。いやだねえ。
一方でホンダが発売した125ccのPCXは売れに売れ、コロナ禍でバイク通勤が増えた2021年にはハンターカブを超えて売上台数一位を記録した。人々から少しずつバカスクの忌まわしい記憶が薄れ、スクーターそのものに対する偏見は減ったように見える。
人を憎んでバイクを憎まず。サウイフライダーニ ワタシハナリタイ。(宮沢賢治)
こんなに無職期間が長くなるなら退職して即免許取りに行けば良かった。
まあ何より先に仕事探そ…。