特別お題「あの店員さんがすごい」
働いていた頃、アパートの近くにローソンがあり、当時は年300日ぐらい通っていた。長年のauPAYで莫大なPontaポイントを得た代わりに、殆どの店員に顔を覚えられた。
しかし店員が自分を覚えている時、自分も店員を覚えているのだ。ニーチェもそう言ってた気がする。
身の上話からオススメ商品までぐいぐい来る大学生のM君、いつの間にか袋詰めを終えている店長のTさん、独特のイントネーションながらも元気な挨拶をするベトナム人のGさん等々、多彩かつ全員レベルの高いお店だった。
そんなある日、夕飯のパックお好み焼き(マヨネーズの袋が乗ってるやつ)を片手にレジに向かうと、見かけない店員が立っていた。名札には大きく『研修中』の文字が。
例のぐいぐい来るM君が「あっ、この子新人です!今レジの練習中です!」とぐいぐい紹介してきたので、気圧されて「ど、どうも」と挨拶。心の中で「お前絶対バックヤードで俺のこと話してるだろ……絶対変なあだ名つけてるだろ……」と思いながらも、平静を保ってお好み焼きを提出。
緊張している新人君は慣れない手つきでバーコードを読み取り、「えぇっと、あっ、あたたたためますか?」と百裂拳を打ちそうな質問をしてきた。微笑ましさを感じながら「お願いします、あとauPAYで」と返すと「え、英雄?」と更に混乱し始めたので、隣のレジを終えたM君がヘルプに来た。
「レジやっとくからあたためやっといて!」と言われた新人君は迷わずお好み焼きをレンジに投入。見間違いでなければマヨネーズの袋が乗ったまま。
「いやぁサーセンっす、まだ全然教えられてないんすよ」と平謝りするM君に「あれ今マヨネーズついたまんま……」と言いかけた辺りでレンジから爆発音が。
パックの表面とレンジの中が大変なことになり、M君の平謝りがガチ謝りになった。「ホントすんません!新品に替えます!」と言われたが、棚に1個だけだったことを伝えると、タオルでお好み焼きのパックをゴシゴシ。
「あー大丈夫ですよ、マヨネーズだけ新しいの貰えれば」と言うと、M君に指示された新人君がバックヤードに探しにいき、少し経って「マヨネーズ無かったんでこっちにしました」と自信満々にからしマヨネーズの袋を渡してきた。
見たことのない組み合わせだったので「はっ?お好み焼きにからし……?」と言うと「これ美味いんですよ!食べたら分かります!」とM君並にぐいぐい来た。キミ人のお好み焼きを爆破したのにぐいぐい来るねぇ!
初めから怒る気も無かったが最終的に気圧されてすごすご帰宅。ぬめりけの残るパックを開けて、半信半疑(というか9割疑)のままからしマヨをお好み焼きにかけて食べた。
意外と美味かった。
やるじゃん新人君。大物になるよ。でも爆破はもう止めてね。
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