何の気なしに眺めていたニュースで本屋大賞なるものが発表されていたので、気分転換も兼ねて十数年ぶりに本屋へ行った。
数ヵ月目の無職にありがちな「何か資格を取らなきゃ」という強迫観念めいたものもあったのは否めない。
小さい頃は夏休みの読書感想文等で表彰されると図書券を貰っていたので、それを新しい本の資金にしていた。図書券はお釣りが出ないのが欠点だが、今の子供も貰ってるのかしら。
久しぶりの本屋は平日ということもあってお客は殆どいなかったが、入店した瞬間に鼻腔を突き抜けた紙の匂いで一気に昔の記憶が蘇った。
人間は五感のうち嗅覚が最も記憶を呼び起こしやすいと誰かが言っていた。確かに防虫剤の匂いで実家の祖父母の部屋やそれに纏わる記憶を思い出す人は多いと思う。
懐かしさを覚えると同時に若さゆえの過ち的な記憶も思い出すので一長一短ともいえるが、「やっぱりこの空間はいいもんだ」と思った。
この本を買うという目的も無く来たので、とりあえず「本屋大賞受賞」のポップが目立つ棚へ行き、凪良ゆう氏の「汝、星の如く」を手に取った。
「一度読み始めるとがっつり没入してしまう」という理由で小説は読まないが、3ページほどのプロローグだけちらりと読んでみた。大賞という評価を抜きにしても一瞬で世界に引き込まれるスムーズな文章でこの先の展開を読んでみたい衝動に襲われたので、断腸の思いで本を棚に戻した。
久しぶりに活字を読んで気づいたが、明らかに昔より文章を読む速度が落ちている。常日頃から5chで他愛のないレスを繰り返している証拠である。
後はTwitter等の短文投稿の文化に染まっていることもあって、一つのテーマについてがっつり文章を書く機会が無くなっている。
そういった部分を矯正するというのもブログを始めた理由の一つになるのだが、なかなか難しいものである。
本屋に来た達成感で結局資格関連の本も買わずに帰っちゃった。無職の信念はゆるゆるである。