現在自分は立派(?)な無職だが、実は元ガス屋である。
昨日のニュースでLPガスの料金体制見直しについて報道されていたのを見て「ああ、やっとかよ」と思っていた。
LPガスの料金は基本料金と従量料金(使用量に応じた単価)を合わせて毎月ガス代を決定するのだが、どちらもガス会社が自由に設定できる。『自由』と言ってもガスの設備や配送にかかる人件費、輸送費を考えると会社ごとに下限があるが。
もちろん会社が違うからといってガスそのものに差は無いため、利用者からすれば安いところを選ぶのは当然である。
そうなると、規模の大きい会社が圧倒的に有利になる。潤沢な予算があれば料金設定のチキンレースを制するのは容易い。安い料金で釣って数年後にしれっと料金を上げる、というのはライバル会社の〇〇ガスの常套手段だった。
顧客離れを恐れた中小のガス会社は、ガス以外のサービスで差をつけ始めた。それがニュースにあった『設備以外の料金』に関わってくる。
自分のいた会社では『貸与』と呼んでいたが、ガス給湯器やコンロの設置、配管工事を無料で行い、それにかかった費用をガス料金に乗せて時間をかけて回収する手段をとった。初期費用ゼロの車のローンみたいなものである。
これは集合住宅のオーナーには非常に助かる。本来なら数百万かかる初期費用を払わず、少し高くなったガス料金で入居者から回収してもらえばいいからだ。もちろん入居してもらえるようなアピールは必要だが。
アパート探しをしている段階では料金など分からないし、部屋に引っ越してガスの開栓を行う時になって初めて教えてもらえる。自分も開栓時の説明でその建物の料金表を見て「たっか」とお客さんの前で言いそうになった。
料金を見たお客さんに文句を言われてもオーナーのせいだからこっちは何も言えない。
なお都市ガスは会社に関わらず料金が一定のためか、この手段をとれない。
顧客獲得のためにこんな平身低頭な策を取れば、当然オーナーは要求を過激にしていく。「もっとサービスしろ、別にお宅じゃなくてもガス屋はいくらでもあるんだよ」となる。
その結果、貸与はガス機器だけに留まらず、エアコンやインターホン、果てにはウォシュレットまで全て無料で取り付け、膨れ上がった費用は入居者が全て負担する羽目になる。本当にガス屋は弱い。
このシステムが無くなるわけだから、自分のいた小さな会社なんてあっという間に衰弱するだろう。
ガス料金が高いと思っている方は、これを機に近くのガス会社がどれだけあるかだけでも調べてみてほしい。賃貸暮らしだと難しいが、もしかすると毎日の献立に頭を悩ませるよりもあっさり生活費を減らせるかも知れない。