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日記、雑記、時々ペイント

肯定の『全然』

今やテレビでも聞くようになった「全然大丈夫」といった言葉に未だに慣れない無職である。

ドラマなどで流れる度に親が「出た出た、この言葉嫌いだわ~」と言っている。自分も違和感を覚えるため肯定の意味では使っていない。

ネットには思いのほか自分と同じ感覚の人がいたが、調べてみると今まで培ってきた自分の知識が偏ったものだと思い知らされた。

辞書によると、『全然』は基本的に後ろに打ち消しの言葉をつけて否定の意を強調する時に使われる。「就活が全然進まない」「いい会社が全然見つからない」等々。決して自分のことを言っているわけではない。

一方で、「すっかり、全面的に」という意味もあるため、肯定的な意味合いで使っても間違いではない。夏目漱石坊っちゃんでも「全然生徒が悪いです」という文がある。文豪が使ってるんじゃこちらも文句は言えない。

初めこそどちらの意味で使ってもOKだった『全然』だが、なぜか肯定的な使われ方は次第に減り、日本語教育の現場では「否定で使うのが普通」という風潮になったらしい。

その風潮が今は若い人達によって打破され始めている。「全然いいよ」とか「全然おいしい」とか、下手すれば周りの会話からも聞こえてくる。何か大きな革命が起きたわけでもないのに、若者がいきなり世代を超えて失われた意味を復活させるというのは考えにくい。

そこで、「もしかしたら、彼らの使う肯定の『全然』は本質的には否定なんじゃないか」と何となく思った。

自分の経験だが、初めに肯定的な『全然』を聞いた文章は前述の「全然大丈夫」だった。このセリフは他の人から「無理してない?」と聞かれたときに使われていた。

若者たちが今までと同様否定の意味で使っているなら、この『全然』は『大丈夫』のほうではなく『相手の質問』にかかっているのではなかろうか。つまり「全然無理してないよ、大丈夫」を簡略化したのではないか。これなら違和感は無い。

そう考えると、例えば友人からの「日曜日遊べる?」という誘いに「全然いいよ」と返すのも、相手からの「日曜日は大丈夫なのかな?」という心配に対して「あなたが心配することは全然無いよ、いいよ」という意味で答えているのではないか。これならやっぱり違和感は無い。

日本人は気遣いの多い民族である。若者であろうと、相手の言葉の意を汲んで「御心配には及びません」と相手を安心させる心が『全然』という言葉に表れているのかも知れない。

 

それっぽくまとめたけど、まあ実際は「マジで」ぐらいの意味で軽く使ってるんだろうね(雰囲気ぶちこわし)。